常圧蒸留の「黒ラベル」と減圧蒸留の「白ラベル」2つの製造方法が本格麦焼酎の幅広さを表現した

明治26年の創業以来、本格焼酎一筋の歴史を歩んできた西吉田酒造は、福岡県の筑後地方に蔵を構えている。ここは九州有数の穀倉地帯で、元来、清酒蔵、または清酒蔵と焼酎蔵を兼ねている蔵が多い。
西吉田のように、本格焼酎一筋の蔵元は珍しい。
この西吉田酒造では、常に消費者に本格焼酎のおいしさと奥の深さを知ってもらうという向上心を抱きながら、麦焼酎の軽くてスッキリという画一的なイメージをくつがえし、麦焼酎の「味の広がり」と可能性をより引き出す製品づくりに取り組み始めた。
試作品を試飲した社員や酒販庖の方々の意見を基に、今、時流でもある減圧蒸留だけでなく常圧蒸留にも可能性を感じた。常圧蒸留は、昔ながらの製法で、麦本来の香りが鼻腔をくすぐり、深いコクのある味わいが口中にたっぷりと広がるのが特徴で、芋焼酎などによく用いられる製造法。

減圧蒸留とは、蒸留器内の気圧を下げて蒸留を行う製造法で、低い温度(60℃前後)で蒸留できるので、軽く飲みやすい仕上がりになる。西吉田酒造は、麦焼酎本来の味の広がりや、可能性をもっと理解してもらいたいというテーマに基づき、減圧と常圧の2種を用意して、麦焼酎の世界の幅広さを表現することにした。こうして、減圧蒸留による洗練の白ラベルと、常圧蒸留による濃厚な黒ラベルが誕生した。2001年、満を持して発売された「つくし」は、またたく間に全国的な人気を誇る本格麦焼酎となった。
ちなみに、ラベルが白と黒のため、白麹と黒麹を使い分けたように思われる方もいるかもしれないが、白ラベル、黒ラベルの両方とも黒麹仕込みである。吉田元彦専務は「つくし」はご飯と合わせて飲むことを追求して造り上げました。だから麦焼酎の良きであるキレを多分に意識しています。ご飯を食べながらお酒を飲むのは日本人の特性ですからね。」と話す。

最後はブレンダーが焼酎の味の責任者

「つくし」に使用されている麦はオーストラリア産のもの。この麦を約65%まで製麦する。これ以上磨きすぎると本格麦焼酎特有の複雑な香りが出にくくなる。「国産の麦はビール製造のために作られているものがほとんど。オーストラリア産の麦は生産者の顔が見えるから安心して使えます」と吉田専務。
「つくし」独特の豊かな風味を最終的に決定付けるのは、最後のブレンドであると言えよう。「つくし」にはいくつかの原酒がブレンドされる。より安定した味になるように配合するのはブレンダーの腕にかかっている。吉田専務は「ブレンドには五感のするどさが必要です。もうセンスとしか言いようがないですね」と話す。この工程を担当するのは、工場長補佐の柿添孝氏。西吉田酒造の焼酎の味を最終的に決める人だ。「みんなが努力して造り上げてきた焼酎が、いい焼酎になるかどうかが私の舌にかかっています。だからものすごい緊張感を持ってブレンドしています」と話す。
製品を均一化するため、季節による微妙な焼酎の変化や、貯蔵タンク、熟成の進みの違いを読み取り、何通りもの組み合わせを取捨選択してブレンドしていく。まさに神業といえる。本格麦焼酎「つくし」は彼の舌なくしては生まれなかった。

目指す味を決めて方向性のある焼酎に

「つくし」には味わいにより深みを出すために、熟成5年以上の原酒を最後に混ぜ合わせる。ここでも柿添さんの五感が活躍している。「今後も目指す味を求めて、方向性のある焼酎を造っていきたいと思っています」と語る吉田専務。西吉田酒造の酒造りに対する真撃で果敢な挑戦は今後も続いていくのだろう。