試行錯誤の末に誕生した胡麻祥酎

紅乙女酒造では焼酎を「祥酎」としている。「祥」は喜びや幸せを意味する漢字だ。紅乙女酒造の出発点は女性社長林田春野さんが、35年ほど前に、敬遠されがちだった焼酎のにおいを何とかして、お客様の喜ぶ顔を見たいと考えたのが始まりだった。
飲みやすい焼酎造りの試行錯誤が始まった。副原料として様々な材料を試したがどれもいま一つ。胡麻を試してみた。だが、香りもコクも強すぎていまひとつの味であった。まろやかさが加われば良くなるのではと、そのまま1年ほど貯蔵していた。タンクを開けてみると、あたりに鼻腔をくすぐるいい香りが立ち込めた。口に含むとまろやかでとても飲みやすい。貯蔵熟成されたことで品質ががらりと変わったのだ。
こうして麦、米麹に胡麻を加え発酵・蒸留させた世界で初めての蒸留酒「紅乙女」が誕生した。

母の思いやりが紅乙女酒造の原点

蒸留酒は「山の貯蔵庫」で熟成される。8つある貯蔵庫はどれもモダンな趣だが、とくに第3貯蔵庫はまるで大聖堂の雰囲気。防火壁や窓には薔薇をあしらったステンドグラスの装飾が施されている。建設会社の人に費用がものすごく高くなるから止めた方がいいと言われたそうだが「大切な祥酎が殺風景な防火壁で区切られるのはかわいそう」という春野社長の祥酎への強い思いやりによって実現した。
春野社長の孫にあたる磯野修営業本部長は「女性ゆえの母の心の現れなのでは」と話す。
お酒は人の心をなごませて、優しくつつみ込んでくれる。紅乙女酒造の原点は、母の心づかいをおいしさで表現することなのだろう。